カモメのはぐれ旅

健康オタクが日本と世界を走る。SixStar Finisher達成(2023/9)

書棚『ランニング王国を生きる』

久しぶりの書棚です。

ランニング王国を生きる(21年7月刊)

ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと
ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと
青土社

著者はスコットランド在住の英国人です。
10キロ30分を切れるくらい、バリバリのランナーですが
文化人類学の論文を書くため、エチオピアに滞在した手記が本書です。


ケニアやエチオピアに代表されるランナーは、


「幼いころから学校に通うため、高地を何十キロも
走っているから強い」


という俗説があるのですが、実地での取材を通して
それを真っ向から否定するところからスタートしています。


本書には、エチオピアの英雄であるハイレ氏
(元マラソン世界記録保持者)やケネニサ・ベケレ選手を目指し、
クラブチームで日々真剣に走る若者たちが描かれています。


10キロを30分5秒で走る力がありながらも、
「才能がない」とあきらめてしまった若者、


ブランクがありながらも、1秒の差を意識して
正確なペースメイクができる若者、


等のエピソードから、非常にハイレベルな、
かつ深く浸透しているランニング文化には驚嘆の一言です。


印象的だったのが、リタイアに躊躇いがない選手が多いことです。


著者はエチオピアで開催された大会にも参加しているのですが、


上位に食い込めないと分かった、
あるいは外国人に抜かれるくらいなら、
という理由で脱落する若者が目立ちました。


彼らにとっては、優勝または好タイムでの入賞があって、
はじめて国際大会などへの道が開けるため、
(=収入を含め人生に劇的な変化をもたらすため)


ただの完走などは、何の意味も持たないということでしょう。


この姿勢は、五輪の男子マラソンでエチオピアの3選手が
そろって早い段階で棄権した姿につながりました。


勝てないと分かった時点で余計なことはしない。


国を代表する大会であろうと、他の国際大会同様
人生を変える一手段に過ぎないので、
そのあたりを冷静に判断しているんだろうと思いました。


リタイア後はさっと切り替え、
秋の6メジャーズを見据えてるのでは、と(勝手に)想像しています。


市民ランナーでは「リタイアする勇気」という言葉も
あるほど、完走にこだわりを持っている人は多いですが、
彼らは全く違う判断軸があるのだな…印象に残りました。

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